”私はここにいるのにどこにもいない”
- Infinite Connection
- 2016年11月5日
- 読了時間: 4分
今まで生きてきた人生は、いったい誰のものなんだろう?
不安に駆られてそんな問いを、投げかけられる相手もいないまま、
今日を生きている人が、この国のどこかにいる。
私たちが月に2回行っている街頭募金。 街を歩く人たちに、ただ支援金を募るだけではなく、支援先ラオスを知っていただいたり、活動に対するメンバーの想いを伝えたりできる機会。
「日本では当たり前のように教育を受けられるけれど、世界には……」
そんな言葉を言いながら、何か違う気がしていた。
少しだけど、確実な"違和感"。
本当に? 日本では当たり前のこと?
そんな時、日本の無戸籍者の存在を知った。
その数、1万人以上。
戸籍が無ければ、就学通知は届かない。
だって存在しない人に届く通知なんて、あるはずないんだから。
その現実を知って、私は街頭募金でもうその言葉を言うことをやめた。
そして、今回の「スタツア in Japan」では、"日本の無戸籍者"をテーマにしようと決めました。
参考にしたのは 「無戸籍の日本人」という、井戸まさえさんという方の書籍でした。
その方は、実際に自分の子どもが一時的に無戸籍になり、その後、無戸籍者の相談に乗る活動をされている方でした。
この本では、様々なケースで無戸籍になった人々の人生が、語られています。
でもいったいなぜ、彼らは、無戸籍になってしまうのでしょうか。
無戸籍になってしまう原因として、最も多いのは離婚後300日問題。
"前夫との離婚成立後300日以内に、今の夫との間に子どもが生まれれば、 その子どもは前夫の子どもとして登録される。"
これは、裁判で前夫が嫡出否認をすれば解決されます。
しかし例えばDVなどで前夫から逃げていたり、関わりたくないなどの様々な事情で、その嫡出否認を前夫に頼むことが困難な場合。
母が出生届を出さずに、無戸籍になってしまいます。
他にも、
親が無戸籍者である故に親の本籍が記載できないケース、 親が制度を理解していないケース、 出生証明書が無くその後親が他の手続きを放置したケース
などがあります。
そして、その影響として、
就学通知が届かない、 住民票が無い、 免許が取れない、 銀行口座がつくれない、 携帯電話が契約できない、 選挙権が無い、 健康保険証が無い、
などがあります。
不利になる要素なんて、数えきれないほど見つけられました。
だけど、きっと
1番怖いのは、 1番苦しいのはそこじゃないって
思って。
「自分の存在を証明できないこと」
まるで、いないはずの存在がいる罪を、背負っているかのように、 周りを怖がる瞳をした人。
親から自分の生い立ちを聞いた人。
だけどその親が亡くなった時、
親が自分の本当の親だったかどうかも、 本当の名前だったかどうかすら、
わからない。
存在しない自分との繋がりを、確かめる術は無い。
今まで生きてきたこの人生は、いったい誰の人生ですか?
自分が"自分"でないと否定されるなら、いったい誰なのか、教えて欲しい。
その答えを教えてくれる人もいないまま、 "ここにいるのにどこにもいない"自分の人生は進んでいく。
そして、もう1つ、無戸籍者の誰もが、何度も描いてしまうのは
"戸籍があった時の自分の人生"。
戸籍が無ければ、自分を証明する術が無ければ、就職はできない。
彼らに、未来の選択肢は無い。
和食の調理師になりたかったと語る人がいた。 なのに、戸籍が無い故に免許を取得できず、別の道を選んだ。 自分が"選べる"道を選んだ。
何十年も無戸籍で、ようやく戸籍を取得できた人がいた。その人は笑ってこう言う。
「今日からが、本当の"私"の人生の始まりです」
"「ここでしか生きられない」人生を、「あそこでも生きられるけど、ここで生きる」に変えなければならない"
著者のその言葉は、その状況は、
私たちの支援するラオスのあの子たちと重なって思わず涙が溢れました。
あの子たちが大人になって、
「教育を受けられた自分の人生」を描いてしまうことが無いように、
空想ではなく彼らの本当の人生にするために、
INCONNEは今日も活動していきます。
そして、日本の無戸籍者の人々について、こうして読者の方々に発信できる機会があり、
この問題を知っていただけることが、少しでも無戸籍の方々の力になれることに繋がっていれば
幸いです。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。
余談かもしれませんが、
時々、
当たり前って言葉は、マイノリティの存在を無いものにしてしまう
って思います。
「日本では当たり前のように教育を…」
私たちが当たり前だって決めつけることで、
ここにいるよって言葉を言えなくなってしまった人が
あの神戸の雑踏の中を歩いていたのかもしれないのだから。
同志社女子大学2回生 広報部 上嶋湖雪
用:書籍「無戸籍の日本人」